第96章 今誰をお母さんと呼んだ?

慰めるどころか、車に乗り込んだ男はノートパソコンを開き、仕事に没頭し始めた。

規則的なタイピング音。そのホワイトノイズが、福田祐衣の張り詰めた神経をゆっくりと解きほぐしていく。

彼女にとっては、切迫した慰めよりも、こうして無言で放置される忙しさの方が、遥かに心地よかったのだ。

マンションの前に到着する頃には、祐衣の感情も概ね落ち着きを取り戻していた。

「今日、実の両親が見つかりました」

車内のタイピング音が、ぴたりと止んだ。

宮本陽叶が顔を上げ、彼女を見る。その瞳は深秋の湖のように静まり返っていた。

彼は一つ頷いた。

「これからは、新しい家族ができるということだ」

福田祐衣...

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